説法・法話
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本当の親切って?

先日、僕の友人が彼のブログにこのような文章を載せていました。


   ドリンク自販機の下の奥深くに100円玉を落とした長女が泣きじゃくりました。 

   昨日の夕方、○○店内での話です。
  近くにいたパートタイマーらしきおばさんがすぐに駆けつけてきたので事情を話すとその人は間髪入れずにしゃがみ込み、猛然と硬貨に手を伸ばしはじめました。
   床は湿っていて、かつ行き交う人たちの靴の汚れで黒く濁っていました。
   周囲は何事かと注目しています。
   たまらず「いやいや、いいですよぉ」と制するように声をかけるも彼女の耳に届きません。
   おばさんの顔面と肩の一部はしばらく自販機の底と床のあいだに食い込んでいました。
   私は困惑するばかりでしたが、ついに取り出すことに成功したそのパートさんは「ごめんね~」といって一旦引き下がり、拾った100円玉を綺麗に拭いて娘に返してくれました。

  私はこのお方に完全にノックアウトされました。○○店のパートさんに幸あれ。名前きいとけばよかった・・・


この文章に対して多くの方がイイ話だなぁと賞賛しておりました。
人によっては「次からはその店で買う」とか、「テレビ番組に投稿してもイイ話で賞金もらえるよ」といった具合に…。



100円玉を自動販売機の下に落とした娘さんの気持ちを汲み取り、すぐに助けてくれたパートのおばさん。
汚れていようがお構いなしに、顔の一部まで汚して100円玉を取り出してくださったそうです。
そして、100円玉が自動販売機の奥深くまで入り込んでしまって泣いている子供に対して「ごめんね」と声をかける優しさ。



娘さんがうっかりお金を落としてしまったことが発端です。
これは幼い子供だとしょうがないことです。

ここで父親としては泣きじゃくる娘を制して

①自分の手を突っ込んで拾う
②娘にお金の大切さを教えるために拾わせる。
③しょうがないと諦める
④誰か拾ってくれる人が来るのを期待する(今回のパターン)

さて、どれが娘さんにとって一番将来につながる答えだったでしょうか?


もちろん落とした娘さんが拾うのが一番適当でしょうが、子供の手では届かない場合もあります。
だったら父親が手助けしてあげるのが答えでしょう。
父親も父としての威厳も保てるし、何よりお金の大切さを教えることができますから。 


あまり綺麗じゃない場所だったらしく、諦めてしまうのもわかります。
ただその際、泣きじゃくる娘さんにどのように説明をするか?
「大事なお金だけど汚いところに入ってしまったから諦めよう」
だと、教えとしては娘さんの将来に不安を感じてしまいます。

誰かが拾ってくれるのを待つのも、店の店員さんなら来てくれるだろうと思うのも間違っていないかもしれません。
実際レストランなどではうっかり落としたフォークなどは自分で拾わないというのがマナーとして成り立っています。

拾ってくれたパートのおばさんは、とても優しく気遣いができる方だったんでしょう。 

「ごめんね」という言葉とともに、綺麗に拭いて娘さんに渡しています。
人として最も尊敬できる行為を行っています。

ただ、僕がショックだったのは、友人が
「パートさんに幸あれ。 名前を聞いとけばよかった…」
というところでした。

これで終わってしまえば、娘さんは
「何かあった時やイヤな役は、誰かがしてくれる」
という気持ちになるに違いない。
そのような親切をしてくださった方に対してきちんとお礼をすることによって、感謝する気持ちと自分で行う大事さを理解できるはずです。


彼はその後そのお店に電話をしてパートのおばさんの名前を聞き、娘さんと一緒にお礼に行ったそうです。
娘さんにはすぐにその意味がわからないかもしれませんが、その行為に対する感謝を知る日が来るでしょう。


仏教用語で言えば、これも一期一会です。
お金を落としたことがきっかけで、お金の大事さ、人の親切というものを知ることができたことは、きっと忘れないでしょう。

副住職

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